中小企業が成長する為の鬼門である組織運営

■組織には共通の価値判断基準が必要

組織には、1つの共通目的・目標に向かって人の能力を結集されるところに運営のポイントがあります。故に、組織には、人が動きやすくする為に共通の価値観が必要になり、それが乏しい集団は烏合の衆に陥りやすい。

組織の要となる組織運営のポイントは以下の5点。①同じ考え方を持つ社員が②目標の共有化を図り③その実践に向け、方策を考え④ルールと基準に基づいて⑤個々が役割に応じ動く集団をつくる事です。

だから、経営者、経営幹部、リーダーは組織に必要な共通の価値観を常に訴え続け、組織・メンバーに共通の価値観を意識させる事が必要となります。組織に共通の価値観がなかったり、枯渇してくるとその組織はただの人の集まりになり、衰退していきます。組織を運営する事は、仕組みやシステムを創る事だけではなく、チームをサビ付かせないように、常に共通の価値観を注入していく事が重要となります。

■能力がないのではなく、やり方を知らないだけの話

あなたは組織を運営する際に必要なリーダーシップやマネージメントを義務教育の中で、学校の先生に教えてもらいましたか?答えはNOのはずです。

日本の義務教育カリキュラムにはないからです。ないから、社会に出て、その立場になり、ぶっつけ本番で初めてリーダーを経験するわけです。大手企業は役職の昇格に伴い、様々な研修を受けて、準備に備えます。しかし、中小企業にそんな余裕はありません。リーダーのあなたに能力がないからではないのです。経験した事のない事を

いきなり実践するから、出来ていないだけなのです。

■中小企業が組織運営する際の弱み

組織運営とは、『トップが部下を通じて業績を上げる』事です。

今迄、一人で各部門を取り仕切ってきた社長にとって、部門・業務を完全に人に任せるには大きな抵抗感があるし心配もある。しかし健全な意味で会社を成長させようと考えたら、この組織運営に会社の舵取り方法を変えなければならない。ここで、誤解して欲しくないのは、何でも自分がやらないと気が済まない社長は会社を大きくしなければ良い。これも会社の生き方であり、特徴である。

①「当たり前の事に対する習慣づけ」の問題

多くの会社で見受けられるのは基本動作が出来ていない事である。基本動作は息を吸ったら吐くように出来ないと組織人になれない。朝起きたらおやようございますと挨拶をする。散らかしたら片付ける。このような当たり前の事を組織人としてやらねばならない動作が基本動作である。特に出来ていないのが、報告・連絡と指示命令である。人を動かす基本動作が出来ていないので、動き方が混乱をきたす。又、決め事を守らない、守らせない習慣もある。やるべき事をキチンとやる習慣がないと何を考えても無駄である。

②数値使って判断する習性が付いていない

日本語で1番正しい言葉は数値である。この数値使って判断する習性が付いていない為にどうしても抽象的な運営方法になっている。数値とは文字通り数字・数量であり、期限である。数値を使わないと「あれはどう」、「これはどう」のやりとりになり、成果はでにくい。

③ルールと基準作りが出来ない

次に「ルールと基準作り」の問題である。中小企業は組織のルールと基準作りを苦手としている。会社運営には「活動」と「管理」がある。畑を切り開く活動、そして成果を出し尽くす為の管理である。活動が最優先である。しかし、活動ばかりで管理に目が行かなければ、本来収穫できる果実をムダにする事がある。その管理づくりの基本がルールと基準作りである。従業員が15~20名ぐらいになると経営者は組織図をつくりたがる。この気持ちもわかる。しかし、組織図のつくり方に問題がある。多くの会社は組織の役職を先ず、決めてそこに人を当て込んでいく、将棋指し型の考えである。だから、組織がキチンと機能しない。組織は役職を与える事が目的ではない。会社に必要な機能を考える事である。その機能が不明なのに、人ばかり当て込むから、機能しない。組織図はあるが役職者の仕事の責任・範囲がはっきりしていない状態になる。社長を通さないと流れない組織体系は、この典型である。組織図をつくったばかりに、かえって経営者が苦労している会社も多い。足元のテーマで考えると仕事の標準化が出来ていない事もルールと基準作りのテーマである。出来る人しか出来ない業務遂行レベルになっている事が多い。

④会社の道標がない為に起こる問題

そして多くの会社に見受けられるのが、会社の道標がない為に起こる問題である。道標とは、灯りをともす役割である。夜道に街路灯があるから、歩ける。同じように会社に方向性・道順があれば、進みやすい。会社は人間動物園である。この人間動物園の動物達は好き勝手に動く事が多い。何故、動くのか?寄せ集め集団で会社としての基礎固めができていないから、バラバラ集団になるのである。会社にとって代表的な道標とは経営理念、ビジョン、経営方針である。会社の目標、方針がわかりづらかったり、なかったりするから、社員の迷いが生じる。組織の道標は羅針盤である。海図無き航海は難破する確率は高い。

⑤組織を動かす人・仕組みの問題

最後に組織を動かす人・仕組みの問題である。戦術とは人を動かす方策である。その仕組みとしてのポイントは2点ある。一つ目はマネージメントであり、二つ目はHOW TOである。マネージメントの本質は「決め事を決めたとおりにやらせる事」である。これが出来ない為に散々苦労している経営者・幹部は非常に多い。HOW TOとはノウハウであり、仕事の標準化である。代表的な組織運営を実践させるマネージメントの仕組みには

次の内容があります。経営理念、ビジョン、経営計画書、業績を検討する機関、PDCAサイクル、目標管理システム、会議・ミーテイング体系、報告システム、評価制度等です。これらも仕組みがないから、リーダー個人のスキル・体験の個人商店でバラバラ集団になりやすい傾向があります。

■中小企業が組織運営する際の強み

反面、組織を運営する際の中小企業の強みは次の通りである。

強みとして押えるのは人が組織を動かす際の人の強みである。中小企業の社員はよく働くし、真面目に働く能力は高い。そして素直な従順な性格集団である。会社が忙しいとき、突発的な時に労を厭わず働く姿勢は立派である。又、基本的に真面目に働く能力は高い。集合体としての特徴は経営者を中心にまとまりがある事である。経営者の顔を見れる事は強みである。何気ない事だが、組織としてのまとまりを考えた時には強い武器である。規模が拡大すればするほど、この武器は使えない。又、小集団であるがゆえに、小回り・変化への対応が早く出来る特性を持っている。

■組織運営において最低必要な会社の環境づくり

従業員数が30人前後の規模に成長している、後継者へのバトンタッチしていく企業にとって大事なポイントは組織運営への移行である。

組織運営とは、『トップが部下を通じて業績を上げる』事である。

今迄、一人で各部門を取り仕切ってきた社長にとって、一つの部門を完全に人に任せるのは大きな抵抗がある。人には任せられない、何でも自分がやらないと気が済まない社長は組織運営には向かない。このようなキャラクターの社長は会社を大きくしなければ良い。これも会社の生き方であり、特徴である。

組織運営において最低必要な会社の環境づくりは以下の点である。

■指示命令系統の明確と統一化      

企業規模が拡大し、業務的に困るのは指示命令系統が複数になり、現場が混乱する事である。しかし指示を出す方は混乱させた意識、自覚症状がない。特に働き人として組織運営未体験の経営者がよく起こす初期現象である。指示命令は1本のパイプを通じ、上から下に流れ、報告は下から上に上がる。このパイプにバイパスを作らない事である。(非常時、即効必要性の指示以外について)バイパスを作るから、誰のいう事を聞けばよいか解らなくなり、道を間違える。しかし、非常時、即効必要性の指示の場合はバイパスを使う。これは社長が現場に直接指示を出す事である。その時は社長が部門長に指示内容の報告をすればよい。

■公の場で意思決定を行う。     

日常の運営上の事を『公の場=意志決定機関=会議・ミーテイング』で決める事である。組織運営とは参画させる事である。参画意識を高めないと自主性は出ない。能力はあっても自主性がないから、『考える、動く、責任を取る事』をしない。継栄3態原則の『企業の生命を創る経営生態の原則』でも触れているが、自分の位置づけの確認、人に認められたい欲求を具現化する為には、『意思決定に関わる事』が重要な要素になる。

面倒な事もあるが、『プロセス』は時間をかける事であり、この時間が人財育成の投資である。

■社長の価値観を理解させる

社長の価値観とその判断基準を社員に移植する事である。これが出来ればバトンタッチは直ぐに出来る。その為には『社長が歩くルールブック』では困る。特に営業所展開で複数事業を持つ会社は重要である。

社長の価値判断は色々あるが、代表的なものは経営理念、ビジョン、経営方針・経営目標、生産性目標、人づくりの基本方針、商品づくりの基本方針、顧客との関係づくり、会社運営に関する基本方針、風土、人材評価の基本的な考え方等がある。

このような価値観をルールブックとしてまとめ、配布し、理解させる事が分身作りにつながる。

■権限委譲 

権限委譲とは『ある権限を任せ委ねる』事である。しかし任せられる方にも『任せ委ねられない人』が居る。                                                       

権限委譲で大切な事は『報告という形の信頼の絆』である。従って、報告癖のない人に権限を任せる事は出来ない。報告を受けない社長は、『責任だけ取る裸の王様』である。

幹部から『権限委譲がない』とよく聞くが、その背景には渡す側と渡される側の両面の問題が混在している。

いずれにしても、権限委譲は組織運営には欠かせない難所である。

組織は、1つの共通目的・目標に向かって人の能力を結集されるところに運営のポイントがあり、チームを組織的に運営する為には、環境整備が必要です。

○チームのマネージメントの方法を決めたり
○チームの効率化を図るために仕事の標準化を行い、教育したり
○メンバーが決まった事を決まった通りに実践したり

基本動作を守る等の人を動かしやすくする為に会社のインフラを整備する事です。

組織は人が動かします。人が組織を動かしやすくする為には、やるべき事をパターン化する事です。やるべき事のパターンを決めないから、習慣化出来ずに定着しません。つまり、習慣化させるためには環境整備が必要となるのです。