仕事の基準を見せる事が21世紀の教育の基準

仕事の基準を見せる

現在の成熟・縮小社会では、仕事が高度化になっており、ルーチンワークの仕事が減り、初めて対応する仕事が増えています。

その影響として、【仕事は盗んで覚えなさい理論】が適用しにくい流れがあります。

勿論、マニュアル=仕事の基準で対応できるのは基礎的業務であり、それ以上の仕事=付加価値を獲得する仕事にマニュアルは通用しません。

しかしこの基礎力は、成熟・縮小社会でないがしろにされている事(目の前の業績に追われすぎて・・)も事実です。

マニュアルの受け止め方は、35歳以下は【資料】と受け止め、ベテラン社員は【回答・虎の巻】と受け止める傾向があります。資料と受け止める意味は、マニュアルを仕事の基準として考えているからです。

回答・虎の巻と受け止める意味は、マニュアルは仕事を盗んで覚えられない人間が頼るものと見ているからです。

特に、35歳以下の社員が多い職場は、この傾向が強くなっています。この35歳以下の社員が受けてきた教育の内容や種類、そしてその教え方が飛躍的に従来とは質的向上をしています。裏を返せば、恵まれた環境で教育を受けてきており、システム化された教育こそが真の教育とする認識が強いから、マニュアル=資料=仕事の基準となるわけです。

マニュアル=資料=仕事の基準の基本概念は、共有化です。日本でのPC検索機能はヤフーが20年前の1996年にスタートさせています。

日常生活で共有する知識を活用して育った世代からすると、マニュアルは資料であり、基準の考えとなるのは当然。ここに教育の2大スタンスである【教える側】と【教えられる側】のギャップが発生し、40代の上司が若手人材育成で苦悩するわけです。

WHAT・HOWよりWHYが大切

仕事の実務能力アップには、次の5つの視点が重要となります。

◎仕事の意味づけ
何故、この仕事が必要かを理解させる事

◎職種としての仕事基礎力のレベルアップ
営業・製造・経理・総務等の基礎知識・技術の理解・習得であり、読み書きそろばん

◎自社の仕事ノウハウの習得とレベルアップ
自社仕事のやり方を理解し、出来るようにする社内実務のレベルアップ

◎業績目標・部門方針を達成させる知識・技術の習得
単月・3ヶ月先に対する具体策の実践強化

◎現場で育てるOJT
現場で仕事を出来るように鍛える方法

現在問題になっているテーマは、仕事の意味づけが出来ていない事による現場での混乱です。仕事の意味づけとは、何故この仕事が必要かを理解させる事です。つまり、現場での業務内容に対し、

・なぜ、この業務が必要なのか?

・この業務を身につけると次にどのような仕事が出来るようになるのか?

・この仕事がもたらす満足度・喜び・達成感は?

この3点をリーダーが社員に説明し、その価値観を理解させる事です。 仕事を教える時は【何をするのか?どのようにするのか?】より【何故、それをするのか?】を教えないから、社員は1人立ちしにくい。

『あの社員は指示通りにしか動かない』とよく聞く。この本質テーマはWHYを知らないから起こる現象。やるべき事を決めても、日々の仕事の状況は変化する。その仕事の目的を理解しないから、変化した時の対応力が弱くなり、指示を待つスタイルの仕事になります。これはリーダーが仕事の意味づけを行っていないから起こる現象です。いくらWHAT・HOWのマニュアルを作っても、WHYがないからレベルアップはできません。

■仕事の達成レベルを早める方法

仕事を教えやすくする為には、仕事を分解する事。仕事を分解するとは、仕事の種類を理解し、仕事の遂行について、その手段・方法を解りやすくする事です。その分解の方法ですが、

・部門毎の業務全体像と大分類となる業務を把握

・そして、大分類ごとに中分類を設定

・中分類が職場の中核となる業務で、定型的な単位作業としての仕事を細かくしていく

・中分類ごとにその仕事の手順を小分類として設定し、更にカン・コツ・ツボをまとめる

つまり、職場の中核となる中分類・小分類が教える仕事となります。

大項目中項目その仕事のカン・コツ・ツボ
業務の流れを理解する書類作成必要情報を記入
●利用申込書
●ヒアリング表(事前調書)
●アセスメント表(選考理由書)②何時だれが対応するのか?注意事項など
●発注の流れを理解(レンタル卸・販売)③発注~入荷までの一連の流れを理解
●ケアマネージャーへの報告④納品状況・お客様の状態・変更点など
●上司への報告⑤状況理解

上記の表のように仕事を分解すると、職場の中核となる中分類・小分類の仕事を覚えるスピードが速くなります。中小企業が個人商店の集まりといわれる要因は、仕事のカン・コツ・ツボを会得する方法が個人任せになっているからわけです。つまり、共通の判断基準を社員に植え込むことにより、社員の成長は著しく早くなります。例えば、料理のレシピ本を見るより、料理番組やYOUTUBEを見て料理をする方が、コツを教えてくれるので簡単に料理が出来る事と同じ理屈で、これがスピードアップのポイント。

■仕事に人の能力を合わせるから生産性がアップする

仕事に基準・目安(手順・工程・時間・指標)があるから、複数の人が同じ仕事をできるようになります。その逆は、社員個々の属人的な能力が基準になって、会社の仕事をやろうとするから、社員が10人いれば10通りに仕事のやり方が生まれ、会社の中が個人商店の集まりになってしまう。そして、個人商店の問題は、現状の能力だけで、仕事をやろうとします。また、その人のやっているやり方が正しいかがどうかも周りはわかりません。人に仕事を合わせるやり方ではなく、会社の仕事に人の能力を合わせるやり方が必要です。仕事に人の能力を合わせると『その人は何ができ、できないか? それはどのレベルで出来ているのか等』を測ることができます。

つまり、仕事の基準・目安ができるから、その人にとって足りない部分がその人の教育テーマになっていきます。

■OJTとは

OJTとは、オン・ザジョッブ・トレーニングの略語で、現場での教育であります。

教育には、外部研修もありますが、一番効果を上げるのがこのOJTです。このOJTは、日常の職場において、メンバーに対して仕事への与え方やその仕事のやりかたを具体的、実践的に理解させ、習得させる事がポイントになります。

OJTの場面は、ごく自然に行われる場を基本的に想定した方が上手くいきます。メンバーは日常業務の中で仕事を覚える機会が多く、その機会に対して常に人から見られている環境を作り出す方が、牽制機能が働いて人は成長できます。

日常の場面とは

●仕事の指示・命令を出す時
●個人面談時     
●メンバーが報告に来た時
●計画・目標作成時       
●会議やミーテイング時                                                                                    
●営業同行時     
●仕事の進捗確認をする時                                                                                             
●現場立会い時  
●1日の仕事が終わった終了報告時                                                                                 
●書類提出時 です。

逆に特別な場面は社内研修会、勉強会です。その理由は1年間で社内研修会や勉強会は良く行っている会社で30回前後だと思います。そうすると年間220日前後の稼働日で30回しかないわけですから、特別な場面になります。この特別の場面は、その仕事を知る、理解する場であり、その仕事を出来るようにする機会ではありません。

仕事を出来るようにする機会は、やはり日常業務の中しかありません。

■説明する事と教える事は違う

説明する事と教える事は違います。OJTの目的は教える事が目的ではありません。メンバーができるようになって、始めて仕事を教えたことになります。ひと通り教えたから、出来るとは限りません。説明とは仕事を分かるように説明する事、それに対し教えるとは仕事ができるようにする事です。教えられる側には、『知る・解かる・出来る』のプロセスがあり、教える側のプロセスは『伝える・理解させる・実務指導』となります。相手が覚えていないのは、自分が教えていないという視点が大切になります。