■賃金改革は全社的な改革が必要と認識すべし
賃金テーマを賃金制度の側面だけでみるから、経営上の本質的テーマが観えてこない。多くの経営者が悩んでいる事は『人件費変動費化による収益構造改革』であり、その為には次の3つが重要である。①固定費の最大ウエートを占める人件費コントロール技術構築、②生産性なくして分配なしの思想を徹底的に浸透させる、③変動費化への4大ポイント(経営技術の構築、人員構成比率の見直し、賃金改革、人事処遇・雇用形態の見直し)である。つまり、人件費の変動費化は賃金制度だけでは解決しないので、全社的な改革が必要と認識すべし。昨今は経営計画書の運営、人事考課制度、職能要件書、業績評価 等の経営諸施策を展開している中小企業も多くなっている。しかし夫々がバラバラで曼荼羅模様化し、体系的でないから上手くいかない。つまり、『経営計画は人事考課表と関係が無いし』、『経営計画と業績評価の結びつきが乏しい』といった状態が現実の中小企業の実態である。
運営面のチグハグさは従業員の納得度を高める事はなく、又経営者の納得度も自分自身で満足できない状況に陥らせる。『賃金体系を補完する機能』を経営の中に創らないと賃金改革の目的は達成できない。その補完する機能を『マイスター式トータル人事7完システム』と呼んでおり、その狙うべきテーマは『我が事型の給与』であり、その7つのポイントを説明します。
■利益確保の業績管理の仕組み
利益確保の業績管理の仕組みとは、目標に対する結果と今後の見通しを明確にする事で原資のテーマである。いくら賃金の評価仕組みだけを変えても、原資という基本的な問題を解決しない限り、現実的には余り意味はない。その為の経営施策は業績検討、今期の業績決定要因の把握、先行管理による業績づくり、決め事を守る、部門別独立採算等が必要になる。
■納得度の高い職能要件システム
納得度の高い職能要件のシステムとは、仕事として何を努力するかを明確にするテーマである。仕事が出来る迄の段階は最初が知る段階、2番目はわかる段階、3番目は出来る段階、最後に継続、定着の段階である。知る、わかる段階レベルでは評価は出来ない。仕事に必要な知識・技術のレベルを明確にしてその能力発揮段階に応じて、最適にクラス分け(等級グレード)したものが職能制度になる。つまり知識・技術のレベルのチャレンジ制度になる。このレベル基準を定めたものが職能用件である。これは全社員により作成し、最終的には業務マニュアル化にする。
■毎月できる目標面接の仕組み
毎月できる目標面接の仕組みとは、結果とその評価を即行う事で反応を早くする事です。目標面接には、その評価査定期間がある。例えば5月から10月迄の半年間の査定期間がある。査定面接をやる時期は、11月に査定実施になる。しかし5月、6月、7月と途中経過の査定をやらないと、人間の印象として後半に頑張った人の方が、印象が強く、やはり高い評価になる。大事な事は評価をする為の評価だけではなく、目標を達成出来るように、毎月応援してあげる事である。しかし毎月時間をとって、面接は現実的に厳しい。だから実態に合った人事考課との一体化が必要になる。具体的な方法として①計画書の進度の確認②決定事項の進捗確認がある。これを会議、ミーティングで実施する。しかもこれは業績検討時の前月反省項目なので改めて設置する必要性はない。出てきた業績結果も査定するが、そのプロセスを査定するから厳しいシステムになる。
■納得度が高い経営計画書
納得度が高い経営計画書の仕組みとは、今年の自分の目標・役割を明確にする事で認識を高める事である。経営運営の集約化が計画書の目的の一つである。中小企業の場合は経営計画書、業績管理、人事考課制度を努力し活用するが、経営企画室がないから夫々の経営施策が全部バラバラになってしまう。だから『計画と原資の関係』、『業績と賃金の関係』、『方針と人事考課の関係』を解りやすく見せる必要性がある。例えば、計画として回収を強化せよと打ち出すが、人事考課項目に回収がなければ、意味がない。このように経営施策の軸になるのが経営計画書である。私は経営計画書を作成する時に、全社員で今期の業績決定要因、今期の重点基本動作を考え、それを人事考課項目に入れ、その基準値も作成すべきと主張している。
■業績実態に合った人事考課
業績実態に合った人事考課のシステムとは、何を評価するかを明確にする事で、迷いを成仏させる事である。多くの中小企業の人事考課項目は『借り物』が多い。借り物だから魂が入らない。入らないから評価する方もされる方も評価ゴッコになっている。それなら30人未満の会社は経営者がエイと決めた方がよい。人事考課制度を実施する必要性があるなら、魂を入れた現場の業績実態に合った人事考課を考えるべきである。人事考課項目は3点から構成する。能力考課、成績考課と基本動作考課である。能力考課は社員個人が仕事に必要な知識・技術の保有レベルを客観的に示すモノサシ。成績考課は知識・技術は保有するが、アウトプットが出ないと意味をなさないのでアウトプットの評価基準。基本動作考課はその会社で守らなければならない必要な基本動作を表すもので業績オンリーでは駄目だとする考えである。あまり抽象的な事をやっても意味がない。よく『責任性』、『協調性』等あるが、計る尺度が難しく、中小企業には合わない。合わない事をやると組織に『ストレス』が溜まりよくない。
■自己資金に見合った時価価値財源のシステム
自己資金に見合った時価価値財源のシステムとは、自己資金に合わせる事で経営の維持を図る事である。
時価財源賞与分配率がある。賞与支給総額うちの何%を自己資金で賄えているかである。違う観点から観ると銀行借入で賄っている比率は何%なのかである。勿論、100%が良い。今年の夏は80%なら、今年の冬は90%を目指す事が必要である。経営テクニックとして、この賞与資金に膨らませて運転資金も借りる事も多い。しかし、それはそれである。資金には『色』がある事を忘れたらいけない。
■賃金は一人一人が主人公
賃金は一人一人が主人公。すごくデリケートであり、難しいテーマでもある。100%納得出来る体系は出来ない。その納得度を如何に高めるかが勝負ポイントである。その為には『人から与えられた評価項目』より『自分達で作成した評価項目』で評価される方がいいに決まっている。当然その内容は会社の方針に沿っている事が前提である。全社員を参画させ、巻き込んで作る事によって、納得度を高めさせる事が出きる。これは運営面にも関係する。中小企業には『人事部』はない。つまり専門にやる部署がないから『実態に即した内容』で運営しないとあれもこれもは出来ない。だから毎月出来る面接制度が必要にもなる。多くの中小企業の社員の方は、賃金の額を『今よりも10%増やしてもらいたい』とは思っていない。それよりも『自分のやっている仕事に対する評価をキチンとしてもらいたい』、『どこが良くてどこが悪いのか』を伝えてもらいたい要望が多いのも事実である。つまり、全社員で一緒になって『我が事型の給与』、『我が事型の賞与の仕組み』を作るから、納得度が高まるようになる。