■基本価値
基本価値とは、ブランド価値の基盤となるもので、製品の基本的な品質のこと。
時計では正確に時を刻むこと、飲食料では安全であること、
自動車では使用目的にあった機能(速度、乗員数、積載量など)と安全性。
まず、この基本価値が完璧に備わっている事が、利用者に認識される事からスタート。
ただ、この基本価値だけで終わるとコモディティになる。
*コモディティとは、日用品で、消費者がどこのメーカーが作ったものかにこだわらず、
基本的な機能さえ備わっていれば購入するもので、ティシュペーパー、くし、くつべら、ビニール傘などがその例。
■「価値」は買う側に認識されなければ「価値」ではない
どんなに企業側が独自技術などを駆使して独自のものを作り上げたとしても、
それが「価値」として買う側に認識されなければ「価値」ではない 。
人は「知っている」ものを「欲しくなる」わけではないので、
相手に価値を感じてもらう為の伝達活動が必要になる。
特に、高付加価値型商品=価値判断情報を提供する=要説明型商品 であるので、
自社の商品の価値を正しく伝える努力が必要になる。
そこで重要な視点となるのが、自社商品の価値をわかってくれる顧客の育成である。
顧客育成の必要性とは、自社商品の価値をわかってくれる利用者、しかもその価値を継続的に利用してくれる利用者を育成する事。
これは企業が提供する価値に顧客の感性をなじませることになり、
売り手の伝える価値を価値としてより感じることができ、
その結果、提供される商品の価値認識が円滑化し、促進される。
■ターゲットを絞るコンセプトマーケテイング
「ターゲットを絞る」ということは、すなわち、「顧客を選ぶ」ということ。
過去の経験則に引きずられる事なく、自らの製品(商品・サービス)の価値を「最も高く」買ってくれる先に提供していくべ きであり、また、そこに合わせて更に価値を高めていかなければならない。
これが、「ターゲットを絞る」考え方である。マーケッテイング力=ターゲットを絞る事は、すなわち、「顧客を選ぶこと」であり、「顧客を選ぶ」という事は、その選んだ顧客に「選ばれる存在」になる事である。
ターゲットを絞る行為は、本質的な顧客との対話の第一歩である。 自分達の価値を評価してくれているのは、本質的に誰なのか、そして、 それはどこに居るのか。これを深く考える時である。
■ターゲットの絞り込み
ターゲットの絞り込みに成功すれば、商品開発の90%は成功したといえます。ターゲットの絞り込みとは、『ある機能・ある顧客・ある使用シーン・ある地域・売り方・ある価格』に特化する事です。
多くの方は、ターゲットを絞ると顧客が減ると考えます。しかし、絞り込みさえ間違えなければ、今までの顧客は減りますが、新しい顧客が増えてきます。
また、自動的に商圏も広がりますし、 価格も上げることが可能です。ある自転車店は、ママチャリを扱う店からスポーツ自転車を扱う店に転身し、成功しています。ターゲットを的確に絞り込めば、それは強みになります。
QBハウスという髪のカット専門店があります。この店は10分でカットを行い、料金は1000円(税込)です。一見安く感じるが、分単位の料金で考えると普通の床屋さんは50分で5000円ぐらいなので、変わらなく、安売りをしているわけではありません。QBハウスの考えは『通常、一般のサロンで行うシャンプーやブロー・シェービング等お客様ご自身で出来ることはサービスに含まず、お客様が出来ないカットのみに特化したサービスを提供するヘアカット専門店』とコンセプトが明確です。つまり、お客様が出来ない事のみをお店で取り扱うサービスと定義し、安く早くカットしてもらいたいお客様のみをターゲットに絞り込んだ訳です。つまり、これは、値下げ戦略ではなく、ターゲットを絞り込んだマーケテイング戦略になります。
■マーケテイングの捉え方
中小企業の戦略を構築する最大のポイントに開発とマーケテイングが位置している。
勿論、大企業のように専任体制はつくれない。
しかし、この機能がないと
既存の商品を既存顧客へ提供するのみとなり、売上高・利益率は確実に減少していき、会社の未来を削っていく。
そもそも、中小企業にマーケテイングは馴染みがないので、その機能役割について、理解が不足している点がある。
マーケティングは、過去のように広告宣伝や市場調査のみに活用されるものではない。単純明快な事は、「誰に」「何を」「どのように」売るのかを明確にする事がマーケテイングである。
マーケテイングをマーケテイングだけで捉えるから、理解しにくい。
「誰に」「何を」「どのように」売るのかを絞るとターゲットを決め、提供する商品のコンセプトを決める事に集約され 、それを実行レベルで考えると見込み先探し、コンセプトの価値の伝え方etcが必要になる。素晴らしい技術を持っている製造メーカーは沢山ある。
しかし、持っている技術の価値の伝え方に、技術開発ほどの知恵・労力を使っていない。
顧客は自社の商品の30%ぐらいしか知らないのが現実。
説明を聞いて、『お宅はこんな事もやっているの・・・』という事はよくある。
全ての業種に共通する事はものをつくる・サービスを提供する機能を持つである。
ものをつくるとはmakingであり、この意味には商品づくりと市場づくりがある。
サービスを提供するとは求めている人に存在を伝え、使い方を教え、利用方法をその顧客にFittingさせる事である。
■成熟社会は売る時代ではなく、価値を伝える時代
成熟社会は売る時代ではなく、価値を伝える時代である。
価値を伝える事の基本ポイントは
◎自社商品の価値とは何か
◎その価値を認めてくれる人は誰なのか
◎その認めてくれる人はどこにいるのか
◎その人にとって、自社はどのような存在でありたいのか
◎その人にはどのような手段をとれば、価値が伝わるのか
◎その人が得られる便益はなにか
◎その人がその価値あるサービスを利用する場面の想定
の7点である。
■サーフイットへの対応
安ければ何でもよい市場からは撤退せよ。パナソニックの津賀社長が社内に宣言した言葉。
ある分野やある地域などの様々な切り口で、夫々の顧客に密着して、そこでトップシュアを目指すとしている。誰に何を売るのか、焦点を絞って事業構造を組み替える必要性がある。活力を取り戻すには、賢い経営に変わるしかない。
つまり、規模の拡大から中味の勝負への転換である。
〇作れば売れた時代はニーズへの対応
〇価値を伝えないと売れない時代はウオンツへの対応
そして今はサーフイットへの対応(search+fit)が求められる。
価値をわかる人を探し、その価値をフイットさせないと売れない時代になっている。
サーフイットへの対応を熟考する時代である。
■顧客というマーケットは存在しない
いくら素晴らしい物を創っても、勝てなければ意味がない。小企業が素晴らしい技術を開発する、素晴らしい製品を開発する事はたくさんある。戦う土俵をキチンと見定めないとまずい戦い方になる。クジラという大きな生き物は太平洋で泳げばよいが、ミズスマシが太平洋に出たら、直ぐに波に飲み込まれる。小さな水たまりを我が物顔で振舞う方がよい。濁った水たまりでも中に誰もいなければ勝てる。事業や製品には、基本のライフサイクルがあり、その流れは誕生期・成長期・成長成熟期・成熟期・衰退期である。
日本の多くの産業は成熟・衰退期に集約されている。
《成長成熟期》
成長市場でありながら、成熟化の要素を求められるビジネス。
従来からの業界慣習や技術ノウハウの見直しが求められる。
《成熟期》
ターゲットとする顧客に製品が行きわたり、買替需要を狙って価格面や販促での競争が激しくなり、利益率が低下する。新しい用途開発や新市場の開拓、製品のリニューアルが必要な時期。
《衰退期》
市場が完全な飽和状態となり、だんだん衰退していく段階。
通常、衰退したあとまた上昇するということはあり得ない。
この3つの期の対処方法は大局で見ると、縮小マーケット=残存者利益の流れになり、
○独創的な事業基盤をつくる(オリジナル・クオリテイ)
○他社のものまねはしない。他社がやる事はやらない
○トップポジションを目指す《マーケットシュア世界一を目指す》
の視点が必要となる。
顧客というマーケットは存在しない。顧客をセグメント・カテゴリー化するから、そこにマーケットという視点が出てくる。マーケットシュア世界一を目指す為には、マーケットを選ぶ事であり、そして、そのマーケットから選ばれる事でもある。
■顧客を選ぶから、付加価値率が上がる
マーケッテイング力=ターゲットを絞る事。
つまり、「顧客を選ぶ」という事は、その選んだ顧客に「選ばれる存在」になる事でもある。その選ぶ基準は、自社の商品(製品・サービス)の付加価値を理解し評価してくれる先である。ターゲットを絞る行為は、本質的な顧客との対話の第一歩である。 自分達の価値を評価してくれているのは、本質的に誰なのか、そして、 それはどこに居るのか。これを深く考える時である。例えば、70歳以上の高齢化顧客ではダメ。次に元気な高齢化顧客、老夫婦で生活する高齢化顧客でもまだ曖昧。介護は必要ないが足が弱って いる高齢化顧客のレベルまで絞り込むとそのマーケットカテゴリーが欲しがる商品・サービスの開発・提供方法が見えやすくなる。 絞ったマーケットカテゴリーにフイットする商品を提供するから、付加価値率が上がる。これを既存客で捉えると、誰に対して・どのような提案をするのかを深く掘下げて考え、提案する事と同じ事といえる。