コラム

仕事の知恵袋

2018年2月9日◆ ◆ 新成長企業に共通するサンプルのない会社づくり ◆ ◆

先を読んで明日の種をつくらなければ・・・

■ビジネススタイルの変更
 
ビジネスのスタイルは、20世紀は労働集約型、21世紀は知識集約型と言われる。
労働集約型とは小さな利益を大量生産で稼ぐことである。
「早く・安く・正確に」をベースしたオペレーション技術が重要で、扱う数量は多く、かかる時間は長くなる。
逆に知識集約型とは、大きい利益を少量で稼ぐ。独自性をベースにした創造性が重要で、大きさ・時間に比例しないクオリテイが成否を決める。
つまり、知識集約型における付加価値の源泉は、商品の「生産手数料」ではなく、知識・技術・情報・ノウハウなど人の「能力」に起因する。労働集約型の場合、競合他社が多くなると最終的には価格の叩き合いになり、付加価値が確保しにくくなる。だが、知識集約型は、やり方によって付加価値をつけることが可能になる。
なぜか?
ビジネススタイルが労働集約型から知識集約型に変われば、原価の構成比が変わってくる。
製品原価には労務費、原材料費、機械設備費などがあるが、知識集約型になると、原価構成のうち知的財産原価(知識・技術・情報・ノウハウ)の占める割合が増える。この知的財産原価は、前述のように創造性が源泉で、他社が出来ない事をやっていく事が基本なので、他社でも同じような事ができて価格競争になる迄には時間が猶予されるから、付加価値がとれる。要は「いかにコストを下げるだけ」ではなく、「いかに付加価値を上げるか」である。もちろん、コストダウンをまったく無視するのではない。あくまでもコストダウンはベースに置き、そのうえで付加価値向上を考えるのである。「新成長企業」にはこの傾向が強い。新成長企業とは創業10?20年ぐらいの急成長企業で、俗に言う「同業種の競合企業がない」「追随しようにもサンプルがない」企業のことである。
この新成長企業に共通するキーワードは「他がやらない事をやる」事を商品開発、マーケテイングの基本コンセプトにしている点にある。競合がないことは強い。競合企業があると、そのやり方を模倣され、結局コストダウンをして利益を出す構図になってしまうので、大きい利益が取れなくなる。
 
■労働集約型から脱皮したサンプルのない会社づくり事例
 
産廃業を営んでいるA社は、創業50年以上の歴史を持つ社員数20名弱の会社である。創業当時は炉施設・設備解体を中心に事業展開を図っていた。技術の固有性が高く、炉設備・施設に付帯する業務に固定客が付いていた。そして現社長は、前社長からバトンを受けたとき、炉解体から出るレンガの産廃業に進出した。 このレンガは産業廃棄物で、有害物質が基準値を超えて含まれているため政令で「特別管理産業廃物」として指定されている。この収集・運搬許可を取得するのは大変難しいが、この会社はその許可を全国66カ所の都道府県・政令指定都市で取得している。つまり、固定客の要望に対応できるように、全国規模で収集・運搬許可を取得しているのである。 収集運搬は小商圏で効率化を上げる事が原則である。しかしその逆をとり、専門性を求められるニッチ分野で広範囲な営業エリアで勝負している。そして中国に国内の炉工場が移転すると察知し、都市ごみ焼却炉のビジネスへと進出し、大きな柱と成長している。
現在、A社は、産業廃棄物の処理ノウハウを提案する環境コンサルティング業にも事業を拡大している。この会社の歴史を見ると、現社長になり、3?5年で常に新しいことにチャレンジしている。つまり立ち上げたビジネスが軌道に乗り始めたら、すぐに次の展開への準備に入るのである。だから、競争相手がいない土俵で勝負ができるのだ。
このようなサンプルのない会社に共通しているのは、顧客が求めるであろう知識・技術・情報・ノウハウを先読みし、構築し、組み合わせている点である。今後予測される産業構造の変化は、私たちが経験していないことが多く発生する。だから過去の経験のみでは、間違いなく対応できなくなる。
先を読んで明日の種をつくらなければ、レッドカードが渡され、「退場」を言い渡されてしまう。
 
ご参考にしてください。

以上
 
マイスター・コンサルタンツ株式会社
代表主席コンサルタント 小池浩二
 

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